在庫表の使い方を確認し、理論在庫と実在庫を照合している様子

在庫表の使い方は、商品の数を記録することだけではありません。

入荷と出荷を記録し、在庫表の数字と実際の棚を照らし合わせる。違いがあれば原因を確認し、その情報を発注、納期回答、販売、資金繰りに生かします。

そこまで使って、初めて在庫表は会社の役に立ちます。

「Excelで作ったけれど、最近は更新していない」

「紙に書いているけれど、担当者しか見ていない」

「在庫表はあるけれど、発注や経営判断には使っていない」

このような状態になっていないでしょうか。

在庫表は、作っただけでは機能しません。

入荷と出荷を記録し、在庫表の数字と実際の棚を照らし合わせる。違いがあれば原因を確認し、その情報を発注、納期回答、販売、資金繰りに生かす。

そこまで使って、初めて在庫表は会社の役に立ちます。

在庫表の基本的な項目や書式を確認したい方は、先に在庫管理表サンプル公開をご覧ください。

在庫表の使い方は「記録」だけではない

在庫表には、大きく二つの数字があります。

一つは、入荷と出荷の記録から計算した理論在庫です。

もう一つは、実際に棚を数えて確認した実在庫です。

理論在庫は、簡単に表すと次のようになります。

前回の在庫数+入荷数-出荷数=現在あるはずの在庫数

ただし、「あるはず」の数字と、実際に棚にある数字が必ず一致するとは限りません。

返品を記録していなかった。廃棄した商品が在庫表に残っていた。箱と個数の単位を取り違えた。別の保管場所へ移動したことが伝わっていなかった。

このような理由で、在庫表と現物には違いが生じます。

大切なのは、在庫表の数字を正しいと思い込むことではありません。

在庫表と現物を照合し、違いがあれば理由を確認することです。

在庫表は、過去の記録を保存するだけの表ではありません。会社の現在地を確かめ、次の判断をするための道具です。

在庫表が機能していない会社で起きること

在庫表が更新されていなかったり、現物と照合されていなかったりすると、次のような問題が起こりやすくなります。

  • 在庫数が担当者の記憶や感覚で決まる
  • 必要以上に商品を発注する
  • 必要な商品が足りず、注文を断る
  • 顧客への納期回答に時間がかかる
  • 在庫確認の電話や聞き取りが増える
  • 動いていない商品を仕入れ続ける
  • 在庫にいくら使っているのか分からない
  • 担当者が休むと、誰も在庫状況を説明できない

こうした問題は、在庫表の書式だけを整えても解決しません。

誰が、いつ、何を記録するのか。どの数字を見て発注するのか。違いがあったとき、誰と確認するのか。

在庫表を使うための決まりが必要です。

在庫表は、実際の棚と照合して使う

在庫表をどのくらいの頻度で更新するかは、商品の種類や入出庫の量によって異なります。

動きの多い商品であれば、取引の都度、または毎日更新する必要があります。

動きがそれほど多くない商品であれば、週ごとの更新でも管理できる場合があります。

ただし、在庫表を日々更新していても、実際の棚と一度も照合していなければ、誤差が積み重なります。

少なくとも定期的に棚を確認し、理論在庫と実在庫を照合します。特に、次のような商品は短い間隔で確認した方がよいでしょう。

  • 入出庫の回数が多い商品
  • 単価や在庫金額が大きい商品
  • 欠品すると顧客に迷惑をかける商品
  • 使用期限や賞味期限がある商品
  • 長期間動いていない商品

すべての商品を同じ頻度で数える必要はありません。

重要な商品から確認頻度を高める方が、無理なく続けられます。

在庫の違いは、人ではなく工程から確認する

在庫表と実在庫が合わないとき、すぐに担当者の間違いを疑ってはいけません。

まず、どの工程で数字がずれたのかを確認します。

確認する点よくある違い
記録の時点入荷や出荷の記録が翌日になっている
数量の単位箱、ケース、袋、個数が混在している
保管場所別の棚や倉庫へ移動している
返品顧客からの返品を記録していない
廃棄・破損処分した商品が在庫表に残っている
社内使用見本や自社使用分が記録されていない
商品名・品番似た商品や品番を取り違えている

誰が間違えたかを探すのではなく、どこで数字が変わったのかを確認します。

原因が分かれば、記録する時点、数量の単位、保管場所、返品や廃棄の扱いなどを見直せます。

担当者を責めるだけでは、次から間違いを報告しにくくなります。

在庫表は、誰かを監視するためのものではありません。問題を小さいうちに見つけ、事実を共有するためのものです。

在庫の違いを人への疑いに変えない考え方については、在庫管理は「信頼管理」。棚の乱れが会社の信頼を崩すでも詳しく取り上げています。

在庫表は、次の行動を決めるために使う

在庫表を更新し、実在庫と照合したら、その数字を次の行動に使います。

発注するかを決める

現在の在庫数だけでなく、最近の販売数や次回入荷までの日数を見ながら判断します。

在庫が少ないからといって、すぐに発注するとは限りません。今後の販売予定や、すでに発注済みの商品も確認する必要があります。

顧客への納期を回答する

在庫があるのか、追加で入荷するのか、いつまでに用意できるのか。

在庫表が更新されていれば、担当者の記憶に頼らず、顧客へ早く回答できます。

動いていない在庫を確認する

長期間動いていない商品が分かれば、販売方法の見直し、値下げ、返品、廃棄などを検討できます。

在庫表には数量だけでなく、最終入出庫日や保管期間も記録しておくと、動いていない商品を見つけやすくなります。

資金繰りを確認する

在庫は、仕入れた時点で現金が商品の形に変わったものです。

売れるまで現金には戻りません。必要以上に在庫を抱えれば、その分だけ会社が自由に使えるお金が減ります。

在庫が資金繰りや利益に与える影響については、在庫が増えると会社はなぜ苦しくなるのかで詳しく整理しています。

在庫表は、棚を管理するだけの表ではありません。

販売、仕入れ、顧客対応、資金繰りをつなぐ表でもあります。

最初から複雑な在庫表を作る必要はない

高機能な在庫管理システムや、細かく作り込んだExcelが必要とは限りません。

最初は、次のことが分かれば十分です。

  • 何の商品があるか
  • 前回はいくつあったか
  • どれだけ入荷したか
  • どれだけ出荷したか
  • 現在いくつあるはずか
  • 実際にはいくつあったか
  • 違いがある場合、その理由は何か

項目を増やし過ぎると、入力すること自体が目的になり、更新が続かなくなることがあります。

まずは、現在使っている在庫表を見てください。

その表から、今ある在庫、最近の動き、次に発注すべき商品を説明できるでしょうか。

説明できなければ、表の形式よりも、更新と確認の方法を見直す必要があります。

まとめ|在庫表の使い方を「記録」から「判断」へ

在庫表は、商品の数を保存するだけの表ではありません。

入荷と出荷を記録し、理論在庫と実在庫を照合する。違いがあれば工程から原因を確認し、発注、販売、納期回答、資金繰りの判断に使う。

そこまでできて、初めて在庫表が機能します。

最初から完璧な表を作る必要はありません。

まずは一つの商品、一つの棚から、在庫表の数字と実際の数量が合っているかを確認してみてください。

その確認が、在庫表を「あるだけの表」から、次の一手を決める表へ変えていきます。

実際の支援現場で、在庫管理と経営管理をどのように整えたのかは、食品製造業の家族経営を再生|在庫管理で利益改善した支援事例で紹介しています。

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次回は、在庫管理が一人の担当者だけに任されている会社で、どのような問題が起きるのかを取り上げます。


※本記事は、マイベストプロ神奈川で2025年11月9日に掲載し、在庫管理コラムとして多く読まれた記事を、同媒体での掲載終了に伴い株式会社平岡商店の自社サイトへ転載したものです。自社サイトへの掲載にあたり、在庫表の更新頻度、既存記事との関係、関連記事への案内を加筆・修正しています。