在庫の棚チェックを5分の習慣にするため、担当者が商品の状態を確認している様子

在庫の棚チェックは、長い時間をかけて行う棚卸しとは違います。

一つの棚を短時間見て、前回との違いや気になる点を確認する。その小さな習慣です。

「忙しくて、棚を確認する時間がない」

「棚卸しは決算前にやっているから十分」

「在庫表は担当者が更新している」

そう考えている会社でも、棚の中では少しずつ変化が起きています。

いつもの場所に商品がない。動いていない商品が奥に残っている。箱の表示と中身が違う。発注したはずの商品が見当たらない。

こうした小さな違いは、年に一度の棚卸しまで待っていると、大きな在庫差異や欠品、過剰在庫につながることがあります。

全部を一度に確認する必要はありません。

まずは5分、一つの棚を見るところから始めます。

棚から利益が漏れていませんか

棚の乱れは、見た目だけの問題ではありません。

商品を探す時間が増える。あると思っていた商品がなく、注文を断る。すでに十分ある商品を重ねて発注する。古い在庫に気づかず、新しい商品から先に出荷する。

一つひとつは、小さな出来事です。

しかし、毎日の作業の中で繰り返されると、少しずつ時間とお金が失われます。

在庫表の数字が合っていても、実際の棚が乱れていれば、必要な商品をすぐに取り出せません。

反対に、棚が整っていても、入荷や出荷が記録されていなければ、現在の在庫数を正しく判断できません。

在庫管理には、表を見ることと、棚を見ることの両方が必要です。

在庫表を照合と判断に使う考え方は、在庫表の使い方|「あるだけ」では意味がない、本当の役割で詳しく説明しています。

在庫の棚チェックで見る5つのこと

5分の棚チェックでは、すべての商品を数える必要はありません。

一つの棚や、一つの商品群に範囲を絞り、次の点を確認します。

確認すること見るポイント
商品の場所決めた場所に置かれているか
数量の違和感急に少なくなった、増えた商品はないか
古い在庫長く動いていない商品が残っていないか
商品の状態破損、汚れ、期限切れがないか
表示と記録商品名、品番、数量単位が在庫表と合っているか

ここで大切なのは、すぐに正確な数量を確定することではありません。

「前に見たときと違う」

「この商品だけ動いていない」

「同じ商品が別の場所にも置かれている」

そのような違和感を見つけることが、棚チェックの目的です。

気になる点が見つかったら、後で在庫表や伝票と照合します。

全部の棚を見ようとしない

在庫チェックが続かない理由の一つは、最初から全部を確認しようとすることです。

倉庫全体を数えるとなれば、時間も人手も必要です。

日常の棚チェックでは、範囲を小さくします。

例えば、次のように決めます。

  • 月曜日は入口に近い棚
  • 火曜日は出荷の多い商品
  • 水曜日は単価の高い商品
  • 木曜日は長く動いていない商品
  • 金曜日は返品や不良品の置場

毎週一つの棚だけでも構いません。

短い確認を繰り返す方が、年に一度だけ大がかりに確認するより、変化に早く気づけます。

入出庫の多い商品や、欠品すると顧客への影響が大きい商品から始めると、効果を実感しやすくなります。

棚チェックを5分で終える流れ

棚チェックを習慣にするには、確認する順番を決めておきます。

1.見る棚を決める

その日に確認する棚や商品群を一つ選びます。

倉庫全体を見回るのではなく、範囲を限定します。

2.前回との違いを見る

商品の並び、数量、保管状態を見て、前回と変わったところを探します。

正確な数を全部数える前に、違和感がないかを確認します。

3.気になる点を一つ記録する

気づいたことを、メモや在庫表に一行だけ残します。

例えば、

  • A商品がいつもの場所にない
  • B商品の箱が開封されたまま
  • C商品の動きが止まっている
  • 同じ商品が二つの棚に分かれている

といった短い記録で十分です。

4.その場で直せることは直す

商品を元の場所に戻す。品番表示を見やすくする。空箱を片づける。

数分で直せることは、その場で対応します。

数量差異や発注判断など確認が必要なものは、無理にその場で結論を出さず、担当者と共有します。

チェック結果を残さなければ、気づきは消える

棚を見て「少しおかしい」と感じても、記録しなければ、忙しさの中で忘れてしまいます。

難しい報告書を作る必要はありません。

次の4項目だけでも、記録として機能します。

日付確認場所気づいたこと次の対応
9月3日倉庫A棚商品Xが別の棚にもある保管場所を一つにする
9月4日冷蔵棚商品Yの期限が近い販売予定を確認する
9月5日出荷棚商品Zが在庫表より少ない入出庫記録を照合する

記録が残ると、同じ問題が繰り返されていないかを確認できます。

また、担当者以外の人も、棚で何が起きているかを把握できます。

これは、第三回で取り上げた在庫管理の属人化を減らすことにもつながります。

担当者の経験を会社で共有する方法については、在庫管理の属人化をなくす方法|担当者しか分からない状態から抜け出すをご覧ください。

間違い探しにしない

棚チェックを始めるときに注意したいのは、担当者の間違いを探す場にしないことです。

「どうしてここに置いたのか」

「なぜ記録していないのか」

と責めるような聞き方をすると、現場は問題を隠すようになります。

代わりに、

この商品は、いつからここに置いていますか

数が違う理由として、何が考えられますか

次から分かりやすくするには、どうすればよいでしょうか

と、事実と工程を確認します。

在庫管理は、社員を監視するためのものではありません。

現場で起きていることを早く共有し、問題が小さいうちに対応するための仕組みです。

在庫管理と信頼の関係は、在庫管理は「信頼管理」。棚の乱れが会社の信頼を崩すで整理しています。

社長や管理者も、ときどき棚を見る

棚チェックを担当者だけの仕事にすると、経営者や管理者には現場の変化が伝わりにくくなります。

毎日見る必要はありません。

月に一度でも、担当者と一緒に棚を見ながら、

  • 最近よく動く商品
  • 長く残っている商品
  • 欠品しやすい商品
  • 保管しにくい商品
  • 数量差異が出やすい商品

を確認します。

棚を前にすると、在庫表や試算表だけでは分からない話が出てきます。

「この商品は売れているが、納品に時間がかかる」

「こちらは数が少ないが、単価が高い」

「動いていないのは、販売担当が変わったから」

こうした現場の事情が、発注、販売、資金繰りの判断材料になります。

実際の支援で在庫管理と経営管理をどのようにつないだかは、食品製造業の家族経営を再生|在庫管理で利益改善した支援事例で紹介しています。

まとめ|在庫の棚チェックを小さな習慣にする

在庫管理を改善するために、最初から大きな仕組みを作る必要はありません。

一つの棚を5分見る。

前回との違いを確認する。

気づいたことを一行残す。

小さな問題は、その場で直す。

確認が必要な問題は、担当者と共有する。

この繰り返しによって、在庫の変化に早く気づけるようになります。

在庫の棚チェックは、棚をきれいにするためだけの習慣ではありません。

欠品、過剰在庫、記録漏れ、古い在庫を早く見つけ、会社のお金と顧客との約束を守るための習慣です。

まずは今日、目の前にある一つの棚を5分だけ見てみてください。

そこに、次に直すべき小さな問題が見つかるかもしれません。

関連記事

次回は、在庫表の数字だけでは分からない「現場の違和感」を、経営者がどのように捉えるかを取り上げます。


※本記事は、マイベストプロ神奈川で2025年10月13日に掲載した在庫管理コラムを、同媒体での掲載終了に伴い株式会社平岡商店の自社サイトへ転載したものです。自社サイトへの掲載にあたり、5分で行う棚チェックの流れ、記録方法、関連記事への案内を加筆・修正しています。原稿台帳では、自社サイト優先で活用する在庫・現場管理の記事として登録されています。