ライザップはなぜ結果にコミットできるのか?そのコーチングスタイルには何か秘密があるのか。
先日赤字決算を発表したライザップ゚。果敢なM&Aによる事業拡大、負ののれん代などが話題に上がりました。市場の要望にこたえ続けることは難しいのかもしれませんが、顧客の要望にこたえ続けるノウハウには今も学ぶ点が多いと思います。職場における上司と部下の関係性、顧客との関係性、私たちのような伴走型支援者にとっての支援先との関係性構築のために求められるコーチングにおけるコツは何か?講義ノートから一部をご紹介したいと思います。
目次
ライザップのコーチングは何を提供しているのか
提供しているのはやせるメソッド(プログラム)になりますが、プログラム以外の何かが継続性を生みだしていると感じます。一つ目は筋力トレーニング、二つ目は低糖食事法です。これは他のトレーニングジムでもそう遜色がないのではないかと思うのですが、三つ目が人気の秘訣だと思います。
それはトレーナーによるマンツーマンのメンタルフォロー。
トレーナーからの一言、ほめられたり、応援されたり、「こんなに自分のことを思ってもらえるなんて裏切れない!」といった動機が発生するのではないでしょうか?トレーナーはパートナーであり、明確な目標設定と継続的な動機づけが持続性の源泉だと思います。
整理〜「目標」と「目的」の違い
目指すものという意味では同じだが、目的は、最終的に実現しよう、成し遂げよう、到達しようとして目指すもの。 目標は、さしあたって実現させたり、成し遂げたり、到達しようと目指すものをいう。 目標には「目印」の意味もあるように、目的を達成するために設けた目印が「目標」である。
つまりは、明確な目標設定だけではなく、「なんの為に痩せたいのか?」「痩せたら何をしたいのか?」などを考えないとまたすぐに元の体型に戻ってしまう可能性が高いというわけですね。
「目標」に意味を持たせた「目的」をしっかりと設定することで、ライザップのユーザーは目標の体重に到達する割合が高くなるし、痩せた後の満足度も高い、というわけです。
コミュニケーションのポイントは痩せたその先にある目的にフォーカスすること。単に痩せるだけでは長続きはしないと思いますが、ここはコーチングの肝だと思います。目標と目的の違いを明確にして問いかけていく点はコーチングの伴走型支援にも同じことが言えます。
このことは、経営などのコーチングにもあてはまると思います。
ライザップの強みの源泉は何か?
ダイエットは何故続かないのでしょう?・・・ダイエットというとキツイ、続かないといったイメージがあります。一部の方を除き、多くの方は厳しいトレーニングを続けることを「楽しい!」って思えないと思います。そうした厳しい環境にトレーニングの専門家が伴走することが一見するとよさそうに見えますが実際はそうでないようです。ライザップのトレーナー採用率は思った以上に低く、トレーニングの専門家は少ないようです。
痩せて健康になることが顧客の本質的な欲求ですから、トレーニングスキル、ナレッジを購入したいわけではありません。だから(本質的に)痩せるためのプロとのコミュニケーションが求められているし、時間価値ではなく、痩せた結果に対しての期待値があるからこそ、返金システムを取り入れているとも感じました。結果にコミットするとは、結果に的を絞ってそれを提供する事であり、トレーニング自体を提供するわけではないのです。
顧客の欲求である理想の身体と自信を手に入れることに貢献することが提供価値だとする考え方は、素晴らしいと思います。
トレーナーに求められるコミュニケーション術
コーチングの肝はコミュニケーション
採用条件は人柄が中心。他人を喜ばせる他喜力が求められ、トレーニングやコンディショニングのスキルも大切なのですが、人と話すのが好き、人と接したり、喜ばせることが好きだという方が求められているのではないでしょうか。いわゆる、コミュニケーションスキルと呼ばれるものです。
そこにはスポーツ経験は不要かもしれません。伴走型支援のコーチングにおいては当然のことながら支援のための専門技術は求められますが、顧客の欲求にこたえ続けていくためには変化する経営環境や要望に応えるために努力し続けることで持続的な伴走支援が実現するのではないかと思います。
コミュニケーションの特徴は一人ひとりに寄り添うこと
ライザップのコーチングはマンツーマンで行われることは有名です。
プログラムは顧客の属性やニーズに応じてカスタマイズされており、顧客の理想の身体にフォーカスすることで共同化が生まれるのだろうと思います。伴走型で支援するためにトレーナー自身も低糖食事法を実践するなどお互いが経験談を持ち寄りながら、辛さを共有するだけでなく、プロの経験者としてのアドバイスにも意識をおいているのだと思います。
そこには、コーチや先輩、サポーターといった関係性が構築されており、単なるスキルやナレッジのサプライヤーではなく、顧客一人一人の気持ちに寄り添う伴走者としての関係性が構築されていると言えます。
トレーナーとしてのプロ意識の変化
ここまで読んでいくと、痩せるためのトレーニングジムにいるトレーナーというよりも、顧客一人一人の目標やゴールを共有し伴走するパートナーのようなイメージを持つ人も多くのではないでしょうか?メモには「聞ききることが目的で、その道具としてのスキルナレッジである。一緒にゴールを設定し、共に考えること。だから喜べるし、結果的にゲストの強化につながる。」と記していました。
入社当時は「自分がやりたいことをやる」、好きな事を活かして仕事をしたいとこの職場、仕事を選んだ若者が次第に「顧客のためにいかにするか?」といったことを真剣に考え行動するようになると言え、そこにはスキル、ナレッジではなく、一人の人としてのコミュニケーションの在り方で接している様子が伺えます。
ライザップの成功から見えたコーチングのあり方
振り返ると、ライザップのトレーナーの在り方やトレーナーとしてのコミュニケーション技法には中小企業や小規模事業者へのコーチング・伴走型支援・ひいては創業支援・事業構想のために必要なエッセンスが多いことに気づかされます。私の普段の仕事の多くは、銀行、信用金庫、商工会などと連携をした小さな会社の建て直しです。そして、そこで有効に機能するのが一連のコーチング術です。
経営には正解がありません。ですので正論を中心とした正解の提示ではクライアントは行動してくれません。一般論や正論よりも納得解が必要なのです。愚論、異論、言い訳に耳を傾け、その奥にあるクライアントの言葉にならない本質的な課題を聴き取り、質問を通じて答えを探し出すアプローチが求められます。
ファミリービジネスクリニックでもそうしたコーチングの結果は明らかで、お陰様で多くのご相談者から嬉しい声を頂いています。ライザップはパーソナルボディメイクが目的ですが、会社のボディメイクにも活用できる点が多いことに気づかされますね。
(告知)小さな会社を理解するためのコーチング術を研修プログラムに
家族経営のような従業員の少ない中小企業、小規模事業者にこそコーチングが必要と考えて研究を重ねてきましたが、この度某金融機関の若手職員様向けのコーチング研修プログラムとして提供することを開始しました。中小企業、小規模事業者、個人事業主の強みや課題、ビジョンなどの「事業性」をただしく理解することを「事業性評価」と呼び、担保や保証に依存しすぎず、取引先の課題解決や目標達成につなげていこうとする取り組みです。
◾️小さな会社は大組織と異なり十分な業績報告が出来る環境でないことが多く、金融機関がコンサルティングバンクとして取引先に寄り添い、ともに課題を解決する伴走型支援をすることが期待されています。詳しくはこちらこちらの事業性評価力を高めるコーチング研修のご案内から確認してください!
→決算書から読む事業性評価、取引先との距離を縮める対話術