中小企業のAI活用の実態。政策公庫レポートをまとめました
政策公庫「調査月報」から見る、中小企業のAI活用の実態
日本政策金融公庫総合研究所が発行する「調査月報」2026年6月号で、中小企業におけるAI活用の実態が紹介されています。
AIというと、大企業やIT企業の話のように感じる方もいるかもしれません。
しかし、今回の調査を見ると、中小企業でもAIへの関心は高まりつつあります。一方で、実際に導入している企業はまだ少数派です。
調査では、デジタル化にまったく取り組んでいない企業を除いた中小企業に対して、2025年3月時点のAI導入状況を尋ねています。
その結果、AIを導入している企業は、
「2023年度以前に導入」が5.4%、
「2024年度に新規導入」が9.2%でした。
つまり、導入済みの企業は合わせて14.6%です。
一方で、「導入していないが導入予定はある」は17.8%、「導入しておらず導入予定もない」は67.6%となっています。
AIへの関心は高まっているものの、多くの中小企業では、まだ本格的な活用には至っていないというのが実態です。
AI導入の壁は「お金」だけではない
中小企業がAIを導入する際の課題として、最も多かったのは「知識・情報関連」でした。
AIに関する基本的な知識が不足している。
どのサービスを使えばよいのか分からない。
自社のどの業務に使えるのか判断できない。
こうした課題です。
次に多かったのが「人材関連」です。
経営者や従業員のAIスキルが不足している。
若い世代は使い始めているが、ベテラン社員は抵抗感がある。
社内でリテラシーの差が生まれている。
このような状況も見られます。
資金不足も課題ではありますが、それ以上に大きいのは、
「何に使えばよいのか分からない」
「誰が使い始めるのか決まっていない」
「使うルールがない」
という問題です。
これは、家族経営や小規模事業者にとっても身近な話です。
AIを導入するかどうか以前に、まず自社の業務がどこで止まっているのか、どこに時間がかかっているのか、どの情報を整理すれば判断しやすくなるのかを見直す必要があります。
AIは「人を減らす道具」ではなく、日常業務を軽くする道具
政策公庫の記事では、AIを活用している中小企業の事例も紹介されています。
ある製造業では、文章生成AIや画像生成AIを導入し、ホームページの記事作成、展示会ブースのデザイン、販促資料、契約書の作成などに活用しています。
ただし、AIを自由に使わせているだけではありません。
個人情報や自社・他社の機密情報は入力しない。
出力結果は必ず人が確認する。
画像を使う場合は、類似画像がないか確認する。
このようなルールを設けています。
また、最初から全社員が積極的だったわけではありません。
従業員が相談に来たときに、AIを使った解決方法を一つずつ伝えていく。
その積み重ねによって、「AIは業務に使える」という認識が社内に広がっていったとされています。
この点は、小さな会社にとって非常に参考になります。
AI活用は、いきなり大きなシステムを入れることではありません。
日々の困りごとを一つ取り上げ、試しに使ってみることから始められます。
たとえば、次のような使い方です。
- 取引先へのメール文案を整える
- 会議メモを要約する
- ホームページやSNSの下書きを作る
- 商品説明やチラシの文案を考える
- 売上や在庫の数字を見ながら、気になる点を整理する
- 社内ルールや業務手順書のたたき台を作る
大切なのは、AIに判断を丸投げすることではありません。
人が見て、確認し、最後は自社の判断に直すことです。
AI活用の前に、現場と数字を整理する
家族経営や小規模事業者の場合、AIを使う前に立ち止まりたい点があります。
それは、現場の情報と会計の数字がつながっているかどうかです。
たとえば、売上はあるのにお金が残らない。
在庫は多いのに、必要な商品がすぐ出てこない。
忙しいのに、どの仕事が利益につながっているのか分からない。
経理処理はしているが、経営判断には使えていない。
このような状態のままAIを使っても、十分な効果は出にくいはずです。
AIは便利な道具ですが、元になる情報が整理されていなければ、的確な答えにはつながりません。
逆に、売上、仕入、在庫、入金、支払い、資金繰りなどの情報が整理されていれば、AIは判断材料をまとめる補助役になります。
たとえば、月次の数字を見ながら、
「売上は増えているのに資金が増えていない理由」
「在庫が増えている品目」
「支払いが集中する時期」
「利益率が下がっている取引」
などを整理する入口として使うことができます。
小さな会社は、AIを小さく試せばよい
今回の政策公庫の記事から見えてくるのは、中小企業のAI活用は、まだ始まったばかりだということです。
導入済みの企業は少数派です。
しかし、実際に使っている企業では、業務効率化、新サービスの創出、品質向上、人手不足の解消など、具体的な成果も出始めています。
小さな会社にとって大切なのは、AIを特別なものとして構えすぎないことです。
まずは、社長や後継者、経理担当者が、日々の業務の中で一つだけ使ってみる。
ただし、個人情報や機密情報は入力しない。
出力結果は必ず人が確認する。
使ってよかったものは、社内で共有する。
このくらいから始めるのが現実的です。
AIは、会社の経営を自動で良くしてくれるものではありません。
しかし、現場の情報と会計の数字を整理し、次の一手を考えるための補助役にはなります。
平岡商店では、家族経営や小規模事業者の方に向けて、現場と会計をつなぎ、数字を経営判断に使える形に整える支援を行っています。
AIを使うかどうかも含めて、まずは自社の業務と数字の流れを整理することが大切です。
出典
日本政策金融公庫 総合研究所
「調査月報 2026年6月号」研究ノート2
「中小企業におけるAI活用の実態」

