「バックオフィスWorld 2026 夏 東京」「マーケティング・セールスWorld 2026 夏 東京」に参加しました|AI時代、経理に残る仕事とは

2026年7月8日(水)〜10日(金)、東京ビッグサイトにて開催された「バックオフィスWorld 2026 夏 東京」「マーケティング・セールスWorld 2026 夏 東京」に参加し、AIや経理をテーマにしたセミナーを聴講しました。

両展示会は同じ会場・同じ会期で同時開催されており、主催はBizcrew EXPO実行委員会(エバーリッジ株式会社内)です。バックオフィスWorldは人事・経理・総務・法務向け、マーケティング・セールスWorldはマーケティング・営業推進・広告・販促・CS/CX・EC向けと対象は分かれていますが、どちらも業務の効率化・生産性向上をテーマにした総合展という点は共通しています。

会場を回って感じたのは、AIをテーマにしたセミナー会場の多くがほぼ満席だったことです。立ち見の来場者が出ている会場もあり、バックオフィスという、これまであまり注目されてこなかった領域に、これだけの関心が集まっていることを実感しました。

数あるセミナーの中で、AI時代の経理をテーマにした講演で、強く印象に残った一言があります。

「資料はいくらでも出る。それっぽいものは出る。だけど、話せない。」

集計、転記、照合、請求書の処理。ルールが決まっていて繰り返しの多い定型業務は、クラウド会計とAIの組み合わせで急速に自動化が進んでいます。「数字を作る」仕事は、この数年で劇的に軽くなりました。すでにクラウド会計を導入している会社なら、実感されているはずです。

では、経理や会計の仕事はなくなるのか。講演を聴きながら見えてきたのは、逆でした。むしろ、これから重くなる仕事があります。

数字だけでは、価値を見いだせない

「ドリルを買う人が欲しいのは、ドリルではなく穴である」という有名な例え話があります。機能そのものではなく、それによって起きる変化にこそ価値がある、という考え方です。

試算表や決算書という資料は、いわば道具です。社長が本当に欲しいのは、資料そのものではありません。「今月、思い切って人を採っていいのか」「この借入、このペースで返して大丈夫か」——迷っていたことが決められるようになる、という変化です。

試算表がきちんと出ている。決算書も期限内にできている。それでも会社が良くならないとしたら、資料の量や精度ではなく、数字が意思決定につながっていないことが原因かもしれません。なぜなら、「数字を作ること」と「会社を良くすること」は、違うからです。

「売掛金回転期間」で、現場は動かない

たとえば「売掛金回転期間が0.3ヶ月悪化しています」という報告は、簿記の世界では正確でも、社長も現場も動けません。同じ事実を「大口のお客さんの入金が、先月から10日遅れ始めています」と伝えれば、営業は動けます。数字と現場がつながった瞬間に、初めて次の一手が見えてきます。

AIが数字を作る時代だからこそ、その数字を経営の言葉に翻訳できるかどうかが、これからの会社の差になっていくはずです。

AIの上流と下流——最後は、人

AIを警戒すべきだという話ではありません。定型業務はどんどんAIと仕組みに任せるべきです。その上で、人が担う場所は、AIの「上流」と「下流」に残ります。

上流は、データの正しさ。AIは入力されたデータが間違っていても、それっぽい資料を平気で作ります。日々の記帳の精度、運用のチェック——ここが崩れていると、どれだけ精巧なAIも「間違った数字のきれいな資料」を量産するだけです。

下流は、判断と伝達。出てきた数字から何を読み取り、何を捨て、誰に、どの言葉で伝えるか。そして最後に、決める。

AIは資料を作れます。しかし、その数字の背景を読み取り、社長と一緒に次の一手を考える仕事は、人にしかできません。

決算書は、過去を報告するためだけのものではありません。現場でいま起きていることを伝え、未来の経営判断につなげるためのものです。AIが数字を作る時代だからこそ、その数字を経営の言葉に翻訳できるかどうかが、これからの会社の差になっていくはずです。


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