頑張っているのに改善しない/和菓子製造会社の再建
― 必要なのは「正しい答え」より「優先順位の整理」でした ―
ご支援の背景
「改善しなければいけない」
それは、経営者ご本人が一番分かっています。ですが、小さな会社ほど、課題が多く、誰の助言を優先すればよいのか分からなくなりやすいものです。さらに現場対応にも追われ、落ち着いて考える時間すら取れなくなっていきます。今回ご紹介するのは、創業40年を超える老舗和菓子製造販売業の再建・事業承継支援事例です。
頑張っているのに、会社が改善しない
この会社は、長年地域で親しまれてきた老舗企業でした。一方で、バブル期の多店舗展開や内部統制上の課題、量販店取引増加による利益率低下などが重なり、近年は赤字が続いていました。金融機関や支援機関とも連携し、経営改善計画も作成。後継者である新社長のビジョンも盛り込み、専門家による支援も受けていました。しかし、改善の兆しは見えませんでした。社長ご夫婦は毎日現場に立ち、社員と共に懸命に働いています。改善したい気持ちもある。行動力もある。ですが、「何から着手すればいいのか分からない」という状態だったのです。
“正しい助言”が多すぎて動けなくなる
資金繰り。
原価管理。
営業改善。
在庫削減。
物流改革。
組織改善。
どれも重要です。実際、それまで提示されていた改善計画や専門家の助言も、内容自体は間違っていませんでした。しかし、小さな会社では、すべてを同時に進めることはできません。結果として、
- 改善項目だけが増える
- 優先順位が曖昧になる
- 現場が混乱する
- 行動に移せない
という状態に陥っていました。特に事業承継期は、
- 社内体制変更
- 現場負荷増加
- 判断基準の揺らぎ
- 営業力低下
なども重なり、経営者の精神的負荷は想像以上に大きくなります。
小さな会社では「経営全体」を見る必要がある
小さな会社では、社長自身が、各部門の責任者であり横断的にリーダーシップを発揮できる唯一無二の存在です。そのため、一つのテーマだけ切り離して改善しようとしても、実際にはうまく進まないことが少なくありません。今回の支援でも、
- 資金繰り
- 在庫
- 受注
- 配送
- 原価
- 販売
- 会計
- 現場運営
など、経営全体を広く確認しながら、その時点で優先順位の高いテーマを少しずつ整理していきました。
現場資料を見ながら、一緒に整理していく
支援では、特別な理論や難しい分析だけを行うわけではありません。実際には、
- 日報
- 発注書
- 在庫表
- 配送資料
- 試算表
- 管理帳票
など、現場で日常的に使われている資料を一緒に確認しながら、「今、何が起きているのか」を整理していきました。その上で、
- 今はどこまで改善するべきか
- 今は優先順位を下げるべきか
- まず何から着手するべきか
を、経営者ご夫婦と対話しながら整理していきました。小さな会社では、「やるべきことを増やす」よりも、「今やるべきことを絞る」ことの方が重要な場合があります。
在庫管理改善が、資金繰り改善につながった
分析を進める中で見えてきたのが、「在庫管理改善が、収支改善と資金繰り改善に直結する」という構造でした。そこで、
- 在庫状況の整理
- 日報運用見直し
- 発注・欠品管理
- 配送効率確認
- 予実管理
- 業務フロー整理
などを、現場負荷とのバランスを見ながら少しずつ進めていきました。重要だったのは、「現場改善」と「財務改善」を切り離さなかったことです。小さな会社では、現場の混乱が、そのまま赤字や資金不足につながります。逆に言えば、現場が整い始めると、数字も少しずつ改善し始めます。
少しずつ、本音を話してくださるようになった
印象的だったのは、支援が進むにつれて、経営者ご夫婦の表情が少しずつ変わっていったことです。最初は、
- 「また理想論を言われるのではないか」
- 「現場を理解してもらえないのではないか」
- 「結局、何を優先すればいいのか分からない」
という不安や戸惑いも感じられました。しかし、
- 現場業務
- 配送
- 製造
- 受注
- 在庫
- 資金繰り
を一緒に整理しながら、「なぜ今こうなっているのか」を共有していく中で、少しずつ本音を話してくださるようになりました。経営改善は、数字だけでは進みません。特に家族経営では、「この人なら実態を話してもいい」と思える関係性づくりが極めて重要になります。
小さな会社ほど「優先順位」が重要
小さな会社では、改善すべきことが常に山積みです。だからこそ重要なのは、「何をやるか」より、「何からやるか」です。正しい助言があっても、順番を間違えれば現場は動けません。また、「今はやらない」という判断も、時には重要になります。今回の支援でも、会社全体を広く確認しながら、
- 今必要なこと
- 今は後回しにすること
- 現場で実行可能なこと
を整理し、少しずつ改善を積み重ねていきました。事業承継や事業再生では、派手な改革よりも、「現場で実行できる改善を積み上げること」が何より重要だと改めて感じた事例でした。


