運送会社の営業力強化と事業承継/対話とデータが組織をつなぐ支援事例
支援内容
- 経営者・後継者・幹部層へのヒアリング
- 経営会議へのオブザーバー参加
- 営業力強化に向けた組織課題の整理
- 販売データ・活動データ活用に関する助言
- 対話環境改善に向けた伴走支援
ご相談の背景
運送業を営む企業様からのご相談でした。長年取引のあった大口顧客との取引が減少し、今後の売上拡大に向けて営業力強化が大きな課題となっていました。一方で、社内では経営者・後継者・幹部社員の間で認識のズレが生じており、
「営業を強化したい」
という方針そのものは共有されているものの、現場で具体的な行動に落とし込まれていない状態でした。同社では既に高性能な販売管理システムが導入され、外部研修や組織改善施策も積極的に行われていました。しかし、期待したほど組織パフォーマンスが向上していないという悩みを抱えておられました。そこで、経営会議への参加を含めた現場確認と、組織課題整理についてご相談をいただきました。
現場で起きていた“認識のズレ”
支援を進める中で見えてきたのは、単純な営業力不足ではありませんでした。背景には、
- 父親である創業経営者
- 大手企業で経験を積み帰ってきた後継者
- 長年現場を支えてきた古参幹部社員
それぞれの立場や価値観の違いが存在していました。後継者は非常に優秀で、データ分析やシステム活用にも長けていました。一方で、現場側には、
「現場を知らない」
「数字だけを見ている」
という距離感が生まれていました。逆に古参社員は、会議での説明や言語化は得意ではないものの、
- 荷主対応
- ドライバー調整
- 現場トラブル対応
- 日々の空気感の把握
など、数字に表れにくい部分を支えながら現場を回していました。しかし、会議の中では、その価値が十分に共有されていませんでした。
「何を言ったか」より「どう聞いたか」
特に印象的だったのは、経営会議でのやり取りでした。同じ報告を聞いていても、
- 現場背景を聞こうとする経営者
- 結論や数字を先に求める後継者
では、受け取り方に大きな違いがありました。結果だけを見れば、古参社員の担当数字は決して良いものではありません。しかし現場を丁寧に見ていくと、厳しい環境の中でも取引先や現場との関係性を維持しながら、組織を支えていることが伝わってきました。小さな会社では、数字だけでは測れない役割があります。そして、優秀な経営者や幹部ほど、
「何を言ったか」ではなく、
「どう聞いているか」を見ています。
その瞬間に、「後継者はまだ現場との距離がある」
ということを感じ取っていた幹部層もおられました。
ONE TEAMはONE DATAから
支援を通じて整理された優先課題は、
①販売動態把握のためのデータ活用方法の整理
②データに基づいた対話環境の構築
でした。
同社には優れた経営管理システムがありました。しかし、各人が見ている数字や判断基準が異なり、共通認識が形成されていなかったのです。データは管理のためだけに存在するものではありません。現場と経営、後継者と幹部、営業と管理部門をつなぐ「共通言語」として活用されて初めて意味を持ちます。そのため、
「ONE TEAMはONE DATAから」という考え方を軸に、
- 結果(数字)
- 過程(現場)
- 原因(行動)
を結びつける視点について助言を行いました。
支援を振り返って
今回の支援では、経営層・中間管理層・現場リーダーへのヒアリングを通じて、組織内の認識やインサイトを整理し、今後の方向性について一定の合意形成を行うことができました。一方で、事業承継期の組織課題は、一度の助言や短期間の支援だけで解決できるものではありません。後継者が現場を理解し、現場が後継者を理解するには、数字だけではなく、日々の対話や積み重ねが必要です。だからこそ、小さな会社の事業承継では、
「経営改善」
「営業強化」
だけでなく、“現場との関係性をどう再構築するか” が非常に重要だと感じています。
現場を知らない社長と言われないためのお勧めコラム
経営者、後継者には3つのタイプがあると思います。
理論派、現場派、社交派。
今回の経営者は現場派、後継者は理論派です。
経営者は後継者に任せようと、一歩下がって関わります。
後継者はたしかに優秀ですが、現場の経験も少なく、現場幹部の声なき声を聴く力量は備わっていません。
立派な販売管理システムや情報共有の仕組みはあれども、何故分かり合えないのか?
会社には三つの階層があります。経営、管理、現場です。
そして、三つの階層で言語は異なります。
さらに、経営者はMUST、管理職はCAN、現場はWANT が思考と行動因子WILLです。
だから、階層の違いをつないでいくための、数字(定量データ)、声(定性データ)による対話が大切です。
事業承継は会社を継ぐことではなく、事業資源の引継ぎです。
アトツギDXがうまくいかないのも、これが理由です。
継ぐか、継がせるか、辞めるか、売るか
事業承継にご関心のある方にお勧めのコラム、支援事例をご紹介します。
▼平岡商店コラム 「継がせられないかもしれない」─そう感じた時に、最初に整えるもの
▼支援事例 試算表が半年止まる会社で、本当に起きていたこと/老舗食品製造業の事業承継支援


