家族経営の建て直し事例/食品製造業の事業再生/事業承継
食品製造業の事業承継/企業再建にまつわるお話です。
ご支援の背景
まず、認定支援機関のアドバイザーから「首都圏への販路開拓の相談」という名目で、支援要請を受け面会をしました。
後継者Y氏の発言から異常を察しまして問いかけた非常に厳しい資金繰りであることが判明しました。売上不振であることは確かであるが、かといって首都圏への販路開拓は優先順位としては不適切ではないかと指摘したところ、Y氏も初めて本心を打ち明けてくれました。
再生支援協議会、認定支援機関、コンサル(元銀行支店長)、税理士、バンクミーティング等による支援体制は確立されているものの、現場で日々指揮を執る立場としては現場の本当の悩みを分かってくれているとは言えず、かといって、自身もつい数年前までは大手製造業で活躍していた身であり、経営管理や資金繰りなどのノウハウはない。
財務諸表を表面的に読み解いて打つ経費節減策なども当初は効果的ではあったが、次第に結果を伴わなくなり現場社員からの評価も下がりつつあるという状況でした。
最近では改革に対する「変わりたくない、しょせん変わらない」といった空気が蔓延しており、離職の噂もチラホラ。どこから手をつけていけば良いか?途方に暮れているという状況でした。
「メインバンクは追加資金調達に動いてくれている」というY氏だが、一般的に条件変更先への融資は考えにくい。
確かに親身になって考えてくれていることは事実だが、この局面では自分の身は自分で護ることが先決と考え支援に乗り出しました。なにより、都会での安定した生活を断ち、家族や地域のためにと移住承継したY氏の生き方と再生に対する真摯な想いに心打たれた事が最大の理由です。
会社の状況
戦前に祖父が創業。戦後の高度成長期には斬新な経営手法が功を奏し、県内トップクラスの事業規模に拡大。全国にその名を轟かせた。祖父死去の後、二代目一族が経営を担ったがバブル期の拡大投資や内部統制の問題で経営不振に陥る。
バブル崩壊後は市場縮小や取引先の淘汰配合など、時代の波に乗り切れず赤字が拡大。潤沢な資金も徐々に目減りする中、バブル崩壊後の不良債権処理の流れの中でメインバンクとの取引条件が悪化。短期資金の引き上げと厳しい約定弁済により、さらに資金繰りは悪化。
見かねたメインバンクは中小企業再生支援協議会の支援を仰がせ、条件変更と再生計画の立案、三代目への親族内事業承継を実行。三代目後継者は厳しい資金繰りの中で社内改革を断行したが、度重なる業績悪化、社内の混乱、創業一族の確執などが続き体調を崩し休みがちとなる。実質的な経営者不在の中で、二代目一族が経営指揮する体制を構築。有名大学から大手企業へと進み、都会で暮らす傍系三代目を実務責任者に据えて生き残りを図った。
支援内容
①事業承継者へのコーチング
資本政策、資金運用、経営目標、新規事業評価、事業戦略、人事、バンクミーティング向け資料作成、事業構想、自身のゴールセッティング、グループ会社の経営管理、同族間の関係性改善、事業承継手法、会議のプランニング、メインバンク訪問同席、税理士調整
②業務品質監査
インタビュー、ウォークスルー、関連帳票閲覧、現地視察
各部門、業務における課題とその原因究明方法を把握
③業務改善コーチング(幹部、管理職、現場社員)
経営(プロジェクトマネジメント、財務管理、BS改善、返済計画、LR、再生計画、資金調達、KPI設定)
物流(配送ルート、棚卸、受発注業務、欠品、集荷、販管システム、マスタ構成)
経理(資金繰り、資金計画、損益計画、売掛残高管理、債権管理、照合・訂正改善)
営業(販売管理、訪問管理、営業日報、販促費、販促策、新規開拓、既存顧客管理)
製造(設備資産管理、棚卸管理、製造原価改善、ロス分析、不動在庫管理)
労務(賃金体系、勤怠管理、人件費管理)
④ミーティングファシリテーション
各部門の会議、幹部・管理職ミーティング
支援の結果
結果:一年間で5,000千円のCFの改善
CFとは??
CFとは、キャッシュフローの略称です。
CFでは、実際の現金や、現金に値するものの増減を示しています。例えば、PLでは利益が計上されていたとしても、入金が3か月後になっていれば、手元には現金がないという状態になります。利益が出た分をすべて借入金の返済に充てていたとすると、現金の増加はゼロになってしまいます。書面上にある損益と、実際のお金とではズレが出ますので、CFを見ることで、会社が実際に使えるお金をどれくらい持っているのか、使えるお金がどれくらい増えたのかを判断することができます
使えるお金がなければ、設備への投資も、新規事業への投資も、最終的には社員の給与を支払うことも難しくなってしまいます。CFで会社としての体力を確認することは大切なのです。