事業承継/健康機器小売業
ー家族で数字を見える化し、“静かにバトンを渡す”経営改善ー
ご支援の背景
創業80年を超える小売業。地域に根差し、長年お客様に支えられてきた一方で、時代の変化とともに経営環境は厳しさを増していました。外から見れば営業は続いている。しかし実態としては、簿外債務や納税滞納、カードローン、知人借入などが複雑に絡み合い、「今月をどう乗り切るか」に神経を使い続ける状態でした。そんな中、ご高齢となったご夫婦を支えるため、息子夫婦が会社を手伝い始めます。しかし、想いだけでは事業承継は進みません。
「会社が今どうなっているのか」
それを家族全員が同じ景色として見られなければ、次の世代は安心してバトンを受け取れないからです。
父の頭の中にしか存在しなかった経営
小さな会社では、経営者の頭の中にだけ会社が存在していることがあります。
どこに支払があるのか。
どこからお金が入るのか。
何にいくら使っているのか。
長年、社長が一人で背負ってきた結果、周囲が見えなくなってしまう。この会社もまさにそうでした。
税理士は決算申告中心。
経営コンサルタントは売上改善中心。
しかし本当に必要だったのは、「お金の流れを整理すること」でした。まず行ったのは、
- 法人・個人資金の切り分け
- 簿外債務の整理
- 滞納状況の確認
- 現預金管理
- 売掛・買掛管理
- 在庫管理
- 日計処理の定着
です。さらにクラウド会計を導入し、記帳、自計化、試算表作成を進めながら、経営状態を“見える化”していきました。
「お金が合わない」を放置しない
老舗小売業では、「昔からこうやっている」が積み重なり、内部統制が曖昧になっていることがあります。
現金が合わない。
帳簿と残高が合わない。
個人と会社のお金が混ざる。
ですが、小さなズレの積み重ねが、やがて資金ショートにつながります。そこで本件では、毎日の売上や支払を整理し、月次試算表や販売データを家族で確認しながら、少しずつ「会社の今」が見えるようになっていきました。単なる会計入力指導ではありません。「数字を使って経営を考える」その習慣を、家族全員で少しずつ作っていったのです。
家族と進めた“共同作業”
幸いだったのは、息子夫婦が非常に真剣に会社と向き合われたことでした。自計化開始から半年ほどで記帳業務が日常化。現預金、売掛、資金残高も徐々に正常化していきました。その後、
- 滞納税金の弁済
- カードローン整理
- 知人借入返済
- 資金調達支援
を進め、危険な資金繰り状態から脱却。現在では、毎月の試算表と販売管理データを家族で読み合せながら、「会社が今どうなっているのか」を共有できる状態になっています。
事業承継は“静かに進む”
事業承継は、株式や代表者変更だけではありません。本当に大切なのは、「次の世代が、自分たちで会社を動かせる状態になること」だと思っています。この会社では、最初から「継ぐ」ことだけを急いだわけではありません。
会社を診える化し、
数字を共有し、
課題を整理し、
納得解を探しながら、
少しずつ役割が変わっていった。すると、いつの間にか、父の頭の中にしかなかった経営が、家族全員のものになっていったのです。親から子へ。無理やりではなく、静かにドライバーが入れ替わっていく。その時、親は安心して、自分の場所を子どもへ譲ることができます。私は、それが理想的な事業承継だと思っています。
事業承継は未来の共有
現在、会社は大きく回復し、事業承継へ向けた準備が進んでいます。もちろん、借入返済にはまだ時間が必要です。ですが、
- 資金繰りを予測できる
- 家族で数字を共有できる
- 問題を先送りしない
- 次世代が経営を理解している
この状態まで来ると、会社の景色は大きく変わります。事業承継とは、単なる手続きではありません。「家族で会社の未来を共有できるようになること」なのだと思います。


