金融機関と連携した家族経営の伴走支援事例/食品加工業/答えは現場にあります
ご支援の背景
今回は地域の金融機関と連携した伴走型支援のコーチング事例です。今の経営者に事業承継した後、思い切った業態展開で市場参入。その品質の高さが評価され、公的機関への納入実績も多く広域販売網を構築しています。大手を含めた競合他社との競争も激化しており、生産性の向上や経営管理体制の構築が求められています。
伴走型支援コーチングに求められたこと
この事業者さんの経営課題は「どこから手をつけていけば良いか?」という課題解決の優先順位の設定です。原価管理、労務管理、資金管理、販売管理、物流管理といったところが主要なジャンルになりますが、家族経営にはこうした課題解決のための部署も人材もノウハウも少ないため、全てに手をつける訳には行きません。
課題はご経営者、管理職、社員、パートさんに至るまである程度把握されており、具体的な解決策についても方向性は持っておられます。答えは現場にあると言いますが、常日頃から現場で働いている方々が最も市場や顧客や社内の様子を熟知しているからです。ただ、何故こうして「優先順位」をつけることが伴走型の支援に求められたかというと、二つの理由があります。
効率と効果、どこからやると納得解が出せるのか?
一つ目の理由は「現場の実態に即した優先順位付け」が必要だという事です。前述したように家族経営、小規模事業者は中堅、大企業と違って経営資源が乏しいです。常日頃の日常業務で手一杯といった状況が常であります。また昨今の人手不足や高齢化なども手伝い極端に人手が不足している実情があることは言うまでもありません。
そうした環境の中での業務改善は、手一杯の社員、特に管理職や現場のエース級の社員に別建てのプロジェクトを遂行していただく必要があるため、マンパワーの側面から「どこから手を付けるか?」優先順位をつけるのが非常に難しいのです。
二つ目は、経営局面を掴んだ上でのリスクの特定が必要だという事です。家族経営、小規模事業者は会社は財務状態、資金繰りや人事、取引先との関係性は自分の身体のごとくご理解されているケースが多いです。そして、それぞれのカテゴリーに対する課題認識も同様です。
そんな中で求められる優先順位とは何か?それはリスクの特定です。おかれた経営環境を冷静に監査し、想定リスクを洗いだし、ご経営者とのコミットメントを得ることが優先順位をつけるための第一歩になりますが、家族経営の経営を支援される方の多くは実際に経営した経験はなく、財務的な側面でのリスクは特定できると思われますが、会社の内情に精通していないため上述した二つの側面からの優先順位の設定が難しいのかと思われます。
このように、経営現場の実態に即しており(現場がやりたいと思う)、かつ経営者の考えるリスク(社長がすべきだと思う)を踏まえて、現場をまとめる管理職、キーマンが最適と考える(管理職が出来ると思う)解決策を見出すことが、伴走型支援コーチングに求められている、という事になります。
ご支援内容
:会社概要、人員体制、財務、販売状況の把握
:原価構造、販売価格、物流体制の把握
:経営管理における重要ポイントの精度確認
:事業計画、経営計画、資金計画の作成方法、プレゼンテーション、運用方法
:経営者との情報共有方法
:フィードバックと経営戦略立案
:リーダーシップコミュニケーション
ご支援の効果
会社の概況(歴史、財務、販売、活動)についての理解を踏まえて課題抽出や解決に向けての優先順位の仮説設定が出来ました。歳末期に向けた季節資金需要予測と調達方法、具体的なアクションプランについても納得がいただけたものと思われます。今後はもう一歩踏み込んで試査すべきポイントを押さえて相談依頼(統制、働き方、販売手法、売価、商品開発、資金)に対する優先度、重要度の考察を行い、効率的かつ効果的な改善策を実施できると思われます。
家族経営の現場力のすばらしさ
コーチングを通じて感じたご経営者、後継者、ご家族、管理職、キーパーソンの皆さんの経営改革に対する真摯な姿勢は、いつもながら心打たれます。苦しい経営状況の中での経営現場での仕事はけっして楽な仕事とは言えません。時に早朝、深夜に及ぶこともあるかもしれませんが、決して希望や理想を見失わず、さらに、もっとと高みを求めて改善、解決を図ろうとするご様子に感銘を受けた次第です。
また、その背景にあるご経営者のリーダーシップ。誰もやりたがらない在庫管理を自ら買って出て率先垂範される後ろ姿を社員はしっかり見ています。私自身も会社が最も変革したと感じた時は必ずといっていい位、そうした現場の仕事を率先した時です。診断する事、評価する事、指示する事は誰にでも出来ます。分かっているけどなかなか思うとおりに動けない課題を最も強く感じているのは現場で働く社員、パート、アルバイト、派遣社員なのです。
経営者が作業着を着て、現場で社員と汗をかくのが日本型経営、フラットな和の経営スタイルといわれます。下町ロケットが視聴者の心をつかむのも、経営者、幹部、管理職から現場の社員までが一体となって目標に向かって進んでいく様子が日本古来の和の精神によるものかもしれません。実際の経営現場で考えると、ご経営者が現場で変化に気づくことが変革の最重要要素であること、答えが現場にあると言われる所以ですね。