
自分のやりたい事でビジネスをすることは素晴らしい事です。自分自身の人生の目指す目標にしている方も多い事かと思います。
先日来コーチングを続けさせていただいているAさんも三年前に起業。持ち前の突破力で短期間に広範囲に販路を広げ、前途洋々に見えるようですが、実際には会社員からの起業ですので中間管理技術はあれども経営管理技術は、、。とりわけ中小企業の経営管理は大手企業とは異なる難しさがあるものです。業種柄、資金調達も不可欠なだけに会社を常に安定走行させるための技術習得が必須です。今日は創業アフターのコーチングサポートを振り返りながら、創業期から成長期にかけてしなければならない「会社の実態を正しくつかむ方法」について簡単に触れてみたいと思います。
目次
利益の出る会社にするための8つのポイント
最初のコーチングのご相談内容に記載された!にご経営者の熱意が感じられます。
前回は財務諸表や経営計画、販売先、仕入先、商品構成、売価、販売方法、物流方法、資金管理、社員構成、役割分担など大よその会社のシルエットを掴ませていただき、ご経営者自身のキャリアやスキル、ナレッジを中心に、事業にかける想い、展望、課題などを聞かせて頂きました。その中で感じたのは非常に素晴らしいスタートダッシュをされていたことです。以下、概要になります。
①創業から三期で広域な販路開拓をされ拡大基調にある
②差別優位性確保のためのブランディング、プロモーション戦略が巧みである
③経営者の人柄が素晴らしくセールスプローモション力に優れている
④事業ポートフォリオ構築力、各事業における経営マネジメントの要諦を把握されている
⑤経理、会計業務にも積極的に取り組み、定期的な業績報告(LR)を行っている
⑥経営課題を的確に把握し、課題意識、解決意欲が明確である
⑦決算やメインバンクの助言を積極的に取り入れ、精緻な損益計画を作成している
⑧販促費削減など合理化を進め黒字転換を図っている
多くの創業経営者で多いのは、②③は得意だけど⑤⑥⑦はスタッフ任せか、ほったらかし。夢の実現のために勢いだけで突っ走り、新しいことに挑戦し、行動さえすれば奇跡が起こると信じ切るパターンです。決して間違っているとは思いませんが、このご経営者はそれもあり、これもやり、といった素晴らしい経営センスです。私自身も含め学びとなる点は多いと感じました。
利益の出る会社にするためには?
前回のヒアリングでは全体像をつかみ、急激な資金の減少やリスクなどによる突発的な経営状態の変化がないか?という点に重点を置いてお話しを聴いた結果、多少の時間の猶予はあると判断し、決算が確定した後でご面会することにしたのですが、今回はさらに踏み込んで前期決算に基づいて、会社の実態を正しくつかむ方法について具体的な手法を用いてご支援させていただきました。
今の会社の実態を正しくつかむことが先決です
「目から鱗!」とは大げさだったかもしれませんが
大変関心を持って理解していただき、即実行に移すとのご回答を頂きました。財務会計、税務会計では言及しない活動基準の原価、コストの把握方法については、普段からしっかりとした計数管理をなさっている背景があるため飲み込みも早く、早期にしっかりとした意思決定基準(管理会計的)を構築されることと思われます。
自分で出来る簡単な経営分析で掴めます
ブランディング、マーケティング投資効率を高めるための、販売先別の粗利益、コストの把握と営業活動などの改善手法についても同様で、単なる業態区分ではなく、利益率、コスト、立替期間などを総合的に勘案したポートフォリオ構築方法についても理解を深めていただけたと思います。
会社の利益や未来を数字で掴む方法
また、部門別、活動基準別に把握した損益実態を踏まえた損益計画、資金計画との連鎖性についても積極的に取り組む意欲を見せておられ、次回は短期から中期的な経営計画、資金計画、償還計画といった中長期的な経営視点を持つための手法やポイントについてご支援を行う予定です。
創業三年目で必要なコーチングとは
これは、あくまでも自論ではありますが、
創業から三期経過するとそこそこの規模にもなり今後が楽しみなケースが多いのですが、創業期は売上も思ったようにあがらず、赤字が累積していたり仕入れたものの不備が在ったり、顧客ニーズを満たせずにデッドストック化した不良在庫を抱えている状況もありえます。怖いのはそれが不良在庫だと気づかずにイケイケドンドンで仕入を重ねる事です。
また会社員、パート・アルバイトなど、働いた分だけ確実に稼ぎが上がる稼業時代には経験する機会がないのが債権管理です。商取引の原則を知らなかったり、売り上げ欲しさに無理に貸し込んだ売掛金などの不良債権、不良とまではいかないまでも販売してから回収するまでの期間が長期化した債権なども会社の体力を奪う要因になります。
さらには仕入先や部下とのトラブル、場合によってはお家騒動的な問題で生じた想定外の費用など、勘定科目だけでは判断できにくい様々なお金の色があります。
残念なのは、起こってしまった事を隠すあまり不正会計、粉飾決算をすることです。そうした行為に至らないまでも本来は会社の経営状態を正しくつかみ、意思決定のために使うべき財務諸表=決算書が、資金調達や申告など銀行や税務署に提出するためだけの資料になってしまっていることです。
起こったことは仕方ない。正しく現実を掴むことが重要です。
私自身も事業承継した会社はバブル崩壊後の不良債権(棚卸、売掛金、株式投資)の整理を必要としており、そうした含み損を抱えた会社への融資を拒む金融機関と会社の生死をかけて必死の交渉をしてきた経験があります。都合の悪いことを隠したい気持ちは分かりますが、見る人が見れば分かるものです。コーポレートガバナンスという言葉が日常的になった昨今ですが今でも大企業、中小企業問わず、粉飾、不正が後を絶ちません。
創業三年目は、創業期に溜まった含み損を正しくつかみ、色分けをしながら未来につなげる戦略や計画の再構築期であり、今回ご支援のAさんのように、数字や現実に逃げずに真摯に他者の声に耳を傾ける姿勢が、周りを巻き込み、さらに大きな成長を加速するのだと思います。
実務経験を持つコーチが必要です
現在、税理士・公認会計士・経営コンサルタント・コーチ・カウンセラー等々
ざっと挙げるだけでたくさんの経営を支援してくれる起業家向けの専門家はいるかと思います。
しかしながら、
そうした資格を持った専門家の多くは実際に資金繰りをしながら苦しい経営をした経験は少ないのではないでしょうか?
ましてや銀行交渉や、取引先との商談、社員教育など、創業アフターの経営者がやらなければならない事柄を一気通貫で助言してくれる実務家が少ないのが日本の中小企業経営の課題かと思います。
セミナーや研修など、短期期間に集中した支援活動は多いけれども、実践・長期間支援を想定した制度はまだ整っているとは言い難い状態です。
スポーツに例えれば簡単です。
ピッチングコーチはピッチャーの経験と理論に基づいて選手の育成をします。ピッチングコンサルタントという名は聞いたことがありません。ピッチングというアクティビテイのコンサルテーションは効果が少ないからです。せいぜい評論するくらいでしょうか?
中小企業経営はスポーツに近いと思います。
企業の経営=マネジメントは実際に走ることだからです。
ただし前述したように走るだけでは不十分で、利害関係者に正しく実態を報ずる事が重要です。つまり、中小企業経営マネジメントとは RUN + REPORT が基本です。それを経営者が自ら率先して目標設定し、社員やスタッフと協働し、時に後方支援するリーダーシップが求められる点が大企業の社長さんとは大きく異なる点です。
スポーツに例えるなら、中小企業の経営者はキャプテンとしてチームをまとめながらプレーヤーとして試合に出場し、一方で資金繰りや選手の管理といったオーナーや監督がやることまで何でもこなせるスーパーマンなのです。従いまして、走ったことのない専門家から受ける支援に効果を感じないのです。
まとめ
コーチングに興味がある方はぜひお問いあわせください。