東京都内の大学2年生、3年生を対象に最新版の中小企業・小規模事業者白書の解説を通じた中小企業の現状、新型コロナウイルス流行後の中小企業の実態、課題と取り組み状況について講義を行いました。

テーマ「答えは現場にあります」

統計データでマクロ的に全体像をつかむことは大切ですが、実社会では現場で一つ一つの事象に向き合い、対話を通じて改善を積み重ねていくことが求められること、そこでは地道なデータ収集とデータを分かりやすく現場に伝える事で実態を正しく共有することが基本にあることをお伝えする機会をいただきました。

参加者の中には実家が自営業の方、就職活動に向けて準備を進めている方、起業やM&Aに関心を持つ方など様々でしたが、現場の実態を知る機会を提供できたと思います。

中小企業白書の読み方、活用方法も解説

講義では、最新版の2021年中小企業・小規模事業者白書の読み合わせを行い、中小企業の定義、日本経済における位置づけ、役割、大企業との違いについて統計データを使いながら解説しました。

新型コロナウイルス感染症流行後の企業の歩み、課題や成功事例などにも触れ、その中で最近の大きな流れである、EC化、DX化の動きや、事業承継、M&Aについて解説を行いました。

現場の経営支援における情報活用

後半戦は現場での支援事例を中心にお話ししました。二年間の社会人大学生としての生活、事業再生の経験と大学院時代の研究を通じて設定した中小企業経営支援における仮説課題である相談者、支援者のミスマッチについての自論、バブル崩壊以降の日本の金融政策と中小企業の歩み、中小企業金融検査マニュアルから、貸し渋り、貸しはがし、日本型金融排除から事業性評価、ローカルベンチマークへの変遷についても触れ、実際に現場で行っている事業性評価の手法や先月の金融機関さん向けのセミナー内容について事例紹介を行いました。

また、中小企業・小規模事業者の現場でどのようにデータを活用しているのか?定量データと定性データをどのように使い分けているのか?なぜ、そのようなアプローチをするのか?といった実践的な話を自身の事業承継、事業再生の経験や、実際の経営支援時の様子などを踏まえて解説しました。

中小企業は経済を下支えしている

緊急事態宣言下のオンライン講義となりましたが、最後には参加者から嬉しいコメントをいただきました。

国内の大半が小さな会社だと知った

デジタル化が進まない理由が腑に落ちた

家業の見方が変わった

データをもっと使えるようにしたい

就職、将来の事を考える上で有意義だった

中小企業に対するイメージが変わった

M&Aというキャリアがあることを知った

などなど、積極的なコメントがあった一方

雇用制度を整備しなければならい

小規模でも意思疎通に問題があるとは

経営者の在り方が経営を左右する

資金繰りが厳しい中で新規事業して大丈夫か

など、大人顔負けのクリティカルなコメントもありました。

講義全体を通じて改めて感じたのは、中小企業に対するイメージは薄く、十分な知識、情報が伝わってないことでした。日常的に目にする広告やニュースなどの情報の中心は大企業が発信していることが多いと思いますが、最近ではベンチャーに就職する方や、起業する学生も多くあえて小さな組織を選ぶ傾向もあります。お金をかけずに出来るブランディング、PRなど、実態を正しく知っていただくための取組を進める必要があるかもしれません。